2019年J1第8節 川崎フロンターレ対湘南ベルマーレを因動分解!
今週もやってみたいと思います。第3弾です。
今週はゴール数少なめでしたね。1-0でホーム勝ちの試合が多かったです。
少ないからといって良いゴールがなかったわけではないので、今週も「ゴールシーンでは一体何が起こっていたのか」を「選手のアクション」から見てみたいと思います。
今回取り上げたいのは、川崎フロンターレ対湘南ベルマーレの神奈川ダービー、川崎の2点目のシーンの注目アクションを取り上げます。
余談ですが、神奈川ってチーム結構多いんでダービーと呼ぶならそれぞれの対戦の名前決めたほうがいいと思うんですよね。あとSKYシリーズってどうなったんですか?
川崎フロンターレ対湘南ベルマーレ2点目のシーン
簡単に説明しますと、川崎の奈良が知念にロングパスを出し、知念が裏に抜けてキーパーと1対1からゴールを決めたシーンです。
因動分解してアクションマップで表すと以下のようになりました。
川崎フロンターレvs.湘南ベルマーレ 2-0 川崎2点目 by Yashin KASHIMA
スペースを空けた田中の3歩
奈良のフィードも知念の裏への抜け出しも素晴らしいのですが、ここではあえてそれ以外のアクションを取り上げたいと思います。
それは川崎の田中の「3歩移動」というアクションです。それにつながるアクションと合わせてアクションマップでは①とマークしました。
知念が裏を取るまでの流れ
このシーンは上記のハイライトの動画時間で言うところの2:32付近です。本当に1秒に満たないアクションなので見逃さないようにしてください。
このタイミングでは、湘南のディフェンスライン4人(左WBの杉岡は馬渡のチェックに行っていた)に対して、小林(奥)・知念(真ん中)・田中(手前)の3人が仕掛けを行っている状態です。そのうち小林はオフサイドポジションにいます。
このシーンでは、奈良がボールを受けフィードをしたとき、知念が見事に裏を取るわけですが、それにしても知念がびっくりするほどドフリーではないでしょうか? 知念の周りだけポッカリとスペースが空いている状態です。結果、ディフェンスからの距離をとることができたため、シュートを打つまで誰からもプレッシャーを受けることはありませんでした。
2:32で止めてもらえるとわかると思いますが、奈良がボールを蹴る直前の状況では一人足りないまでもディフェンスラインは形成されていたのです。にもかかわらず、ぽっかりスペースが空いたのはなぜか? そこが今回のポイントです。
もちろん、曲線を描くように走り、ディフェンスラインと駆け引きをした知念の動きは素晴らしいものでした。しかしそれだけであったならば、もしかしたら、湘南の左CBの小野田がパスをカットできた可能性やパスが通ったとしても追いつけた可能性があります。ですが、小野田は知念が裏に抜けた瞬間には本来いるべきディフェンスライン左のポジションにはいなかったのです。
何故小野田はそこにいなかったのか?
そこで出てくるのが田中の3歩です。
もう一度、奈良がボールを蹴る瞬間に戻してみてください。この瞬間、どうしてもボールのところにいる奈良や、裏へのランニングを始めている知念が目立ちます。
でもここであえてみてほしいのが、川崎の前線にいる3人のうち一番手前にいる田中です。田中は、奈良がボールを蹴り出す瞬間にボールを受けに行くような素振りで、マイナス方向に3歩だけ移動します。するとそばにいた小野田はそれをチェックするために田中の動きについていきます。そうです、この動きによって小野田はディフェンスラインから外れてしまうのです。
もちろん小野田の動きが悪いわけではありません。もし、奈良が田中にパスを出していれば、田中に入った時点で潰すことができる可能性は高かったでしょう。しかし、ボールは田中と小野田、二人の上空を通り過ぎていきました。
結果として、奈良のパスはフリーの知念に通ることになります。
田中の動きは偶然だったのか?
さて、もう一つ気になることがあるのではないでしょうか?
それは、「田中の動きは偶然だったのか?」ということです。
その答えはもう少しだけさかのぼってみるとわかります。もう1秒未満の出来事なので、Youtubeのタイムコードで指定できないのがもどかしいのですが、奈良がフィードの予備動作として、ボールを少し前に転がす瞬間を見てください。見るのは奈良ではなく田中です。このとき、田中は首を振ってしっかりと知念の動きを視認しています。知念はすでに動き始めていましたので、田中には知念がこのあと自分の背中側(湘南ゴール側)に走ろうとしていることがわかったでしょう。そのとき、田中は懸念として、自分のそばにいる小野田が知念のケアに行くことが思い浮かんだのではないでしょうか。そこで、自分がボール側に移動することで、ゴール側のスペースを空け、同時に小野田を釣りだそうと考えたことでしょう。
つまり、田中の動きは偶然でも何でもなく、しっかりと意図されたプレーだったと考えるのが妥当でしょう。
この試合、これ以外のシーンでも、このあたりの味方のアクションを見て、それを理解し自分のアクションを決めるというルーティンとそれを導き出すための共通理解が恐ろしいほど徹底されているのが見て取れました。これは、言うは易し行うは難しでしょうね…
今回は、勝負を分けた「なんてことはないような、特別な3歩」のアクションを取り上げました。
サッカーは細かいところを見れば見るほど面白くなっていきます。みなさんもぜひ選手の細かなアクションに注目してみませんか?
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